(現在のシステムおよびルールでの)誤爆回避専用キーワードを登録・削除することの是非

キーワード「六十三」で仲裁に入ってみましたが、やはりあまり効果はなかったようです。そもそもの議論の前提として必要なはずの「相手を尊重する態度」が双方に見られない以上、なかなか解決には至らないような気がします。
さて、前回ちょっと書きかけていたので、少し続きを書いてみます。なおここでは、誤リンクのことを「誤爆」と呼称します。


この件については、直近のはてなによるキーワードに関する声明id:hatenadiary:20060705#1152101200をどう解釈するかが重要になってくるでしょう。以下はてなダイアリー日記より引用します。

(前略)
誤リンクを避けることを目的として

  • キーワードとして有益な単語が、誤リンク防止を理由として削除される
  • カギカッコ付きキーワードの登録
  • 誤リンク防止を理由とした意味のないキーワードの登録

など、編集ルールが煩雑化する傾向となっており、キーワードの登録や編集の際にこのようなルールに起因するトラブルが発生しているとの複数のご指摘をいただいております。

今後の編集方針につきまして

はてなといたしましては、上記「はてなダイアリーの日記」におきましてもコメントいたしました通り、なるべくたくさんのキーワードが登録され、情報が充実することを目標としておりますため、このような編集ルールの煩雑化は避けたいと考えております。

そして、このような状況につき、あらためて検討いたしました結果、今後は、誤リンクを根拠としてのキーワードへの制限は行わず、システム面での改善により誤リンクのデメリット自体を軽減する施策を取ることが望ましいのではないかという結論に達しました。
(後略)

これによると、「誤リンク防止を理由とした意味のないキーワードの登録」つまり誤爆回避専用キーワードの登録は「編集ルールの煩雑化」であると言えます。そして、そのような「煩雑化は避けたい」という意向も示されています。ここで重要なのは「編集ルールの煩雑化は避けたい」というのは何を意味しているのか、ということなのです。
はてなは「なるべくたくさんのキーワードが登録され、情報が充実することを目標」としているため、キーワードがいたずらに削除されることは望んでいないでしょう。しかし同時に、「誤リンクのデメリット自体を軽減する施策を取ることが望ましい」とも述べており、誤爆のデメリットについて(対策を取る必要がある程度には)認識していると思われるのです。この現状において、各ユーザーによる上記の行為をルールで禁止したり推奨したりすることは有効でしょうか。

禁止した場合

ルールで上記行為を禁止した場合、「意味のあるキーワードを登録する」以外での誤爆回避行為が禁止されることを意味します。たとえ誤爆を大量に生み出す単語が生成されたとしても、削除することはおろか、カギ括弧付きキーワードに移動することさえできなくなります。
リンクスコアへの投票としきい値を併用することにより、自分の日記から誤爆を排除することはある程度可能ですが、残念ながらキーワード自体の有益性向上にはあまり寄与しておらず、万能ではありません*1。現状においてさえ、場合によっては上記行為がより有効であることには変わりなく、これを禁止することは全体としてキーワードシステムの発展に不利益をもたらすのではないでしょうか。
過去の例に照らし合わせてみると、例えば「スト」は一日に数百件以上もの誤爆を発生しました。しかもその誤爆対象があまりに多岐にわたり、キーワード登録で対応することは現実問題として不可能でした。内容としても「ストライキの略」以上の解説を書くことは不可能であり、キーワードとして有益とは言い難いでしょう。
また、「なっち」は、「安倍なつみ」に関する日記を探すのに有効なキーワードですが、動詞「なる」の促音便形などへの誤爆頻度が非常に高く、そのままでは使いにくいキーワードでした。しかし「なっちゃ」が登録されたことにより、誤爆の多くをフィルタリングすることができ、「なっち」の有益性が改善されたのです。
「なっちゃ」はリンクスコアシステムの改修後にいったん削除されましたが、再登録されており、このキーワードが今もって有用であることを示していると言えます。

推奨した場合

ルールで上記行為を推奨した場合、はてなとして誤爆回避行為を推進することを意味します。しかし、はてながどの程度の誤爆なら回避が必要なのかを明示しない限り、各ユーザーによる判断で誤爆回避が行われることになります。つまり現状とほぼ同じですが、はてなのお墨付きがある分、「誤爆」の名の下に恣意的な削除が行われる危険性は増加するでしょう。ルールで推奨されている以上、誤爆による削除を復帰させることがルール違反となってしまうため、極端な場合、少しでも誤爆が発生していれば削除理由として成立してしまいます。このような状況ははてなの望むところではないでしょう。
従って、どの程度なら誤爆回避を行うべきかを調べる必要があるわけですが、id:n_kakka:00000306で私が述べているように、誤爆自体にも様々な種類があります。これらを一つ一つ定義して、誤爆回避を行うユーザーに対してその定義を理解してもらわなければなりません。これこそはてなが避けたい「編集ルールの煩雑化」ではないでしょうか。


以上の考察から、はてなは「(上記のような行為を)はてなの正式なルールとして禁止したり、推奨したりするのは避けたい」と言いたいのではないか、と私は考えます。すなわち、上記のような行為をはてなとして肯定も否定もしていない(もしくはできない)ように思えるのです。
結局、一般的なルール化がなされない以上、各キーワードについて、ひとつひとつその是非を考えていくしかないのでしょう。誤爆回避専用キーワードを登録・削除することで考えれば、それ自体の是非を論じても、議論を解決に導くどころか混迷させる原因にしかならないように思います。

*1:例えばキーワード自体のスコアを一ユーザーで制御することはできなかったり、含む日記にノイズが含まれることには効果がほとんどなかったりします。リンク不要に投票すれば含む日記からも消すことができますが、あくまで個人単位であり、キーワード側から見れば誤爆は除去されにくい現状です。