魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's 感想

半年ほど日記放置していました。
Twitterでは既に感想をつぶやいたのですが、書き足りないところがあったので、久しぶりにこっちに書くことにします。
劇場版リリカルなのはの2作目。前作は当時住んでいた名古屋で見たので、およそ2年半ぶりの続編ということになります。

A'sをリメイクすることの困難さ

正直、私は今作を見に行くのを迷っていました。というのも、今回のリメイク素材であるA'sは、私が「なのは」のテレビ版で唯一全話見たことがある作品であり、またそのストーリーは高く評価していたからです。全13話中、いわゆる捨て回は1話もありません。なのはのファンならずとも、唸らざるを得ない名作と言えるでしょう。
しかしその無駄の無いストーリー構成ゆえに、劇場版リメイクには向かないのではないか、と私は考えました。余計なものがないゆえに、1本の映画として再構成するのは、非常に困難だと思われます。取捨選択を迫られるのは間違いなく、ともすれば劣化したものを見せられるのではないかという不安がありました。
私は前情報を一切調べず、見に行くことにしました。

感想

以下、ネタバレを含みます。
私の懸念は払拭されることはありませんでした。150分という上映時間にテレビ版13話を詰め込み、できあがったのは、残念ながら、冗長な作品でした。こんなにも尺を使う必然性はないと感じました。
リメイクするにあたり、ストーリーを単に圧縮したわけではなく、グレアム提督やリーゼ姉妹を登場させず、闇の書との因縁をリンディとクロノに集約させています。しかし展開に関わる大きな変更点はそれくらいで、あとはほぼテレビ版と同じです。
根強いファン層に支えられた作品らしく、ファンサービスは十二分と言っていいでしょう。個々のシーンは全く手抜きなく、むしろ前作よりもパワーアップしているかも知れません。魔法少女のお約束である変身シーンは細部までこだわっているし、「なのは」お得意の空戦シーンは、手に汗握る展開で見所たっぷりです。
ですが、各シーンの描写は十分に評価できるものの、それぞれが無駄に長すぎて(変身シーンとかその最たるものです)、ストーリー全体として見ると、間延びどころか退屈です。武器とか服装、変身バンクや戦闘描写は作画上は重要でも、作品の中ではあくまでアクセントでしかありません。それらディテールを重視するあまりに、ストーリー全体のバランスを壊してしまったように感じました。テレビ版がよくまとまっていただけに、余計にです。
それでも、前半はまだ良かったです。物語後半、闇の書の意志との戦闘では、なのは・フェイト・はやての3人のそれぞれの戦いを交互に描くのですが、これがまた長くて、しまいには眠くなってくる始末。緩急つけて小気味よく見せてくれればいいのですが、どのシーンもファンへのサービスとばかりに濃密に描くものですから、お腹いっぱいになってしまいました。
いわゆるファンムービーとして見るなら、ディテールを詰め込んでも、見る人はみな喜んでくれるでしょう。しかし、一つの作品として考えると、及第点を与えるには厳しい。上映時間が長いことにストーリー上の必然性があるのならば、まだ納得もできます。しかし、ストーリーはそのままで、ディテールを描くために尺を伸ばしてしまっては、冗長になるしかないのは必然でした*1。TV版はよくまとまっていただけに、もったいない。

テレビアニメにはテレビアニメの、映画には映画の作り方というものがあると思います。テレビアニメで名作だったものをそのまま映画に作り替えたからと言って、名作たり得るかはまた別問題。本当に、もったいない作品だと思います。

*1:ただ、「なのは」ファンが求めるものが、描写の深化であるような気もしているので、そういう意味でもこの形で作られるのは必然だったのかも知れません。