政府、レコード輸入権導入の方針固める

政府が、今回の著作権法「改定」でレコード輸入権を導入する方針を固めたようです。
http://www.asahi.com/business/update/0216/038.html
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040216AT1F1500415022004.html
http://slashdot.jp/articles/04/02/16/0359258.shtml?topic=52
これで音楽業界は安泰です。良かったですね。アジアからの激安な逆輸入盤は入ってこないばかりか、欧米からの洋楽の並行輸入盤も入ってこないようにすることができます。
もちろん、洋楽ファンの強い要望にお応えして、日本限定仕様と銘打って、コピーコントロール円盤*1で発売。限定盤なので、お値段は欧米盤よりも若干、若干高くなりますが、そこは申し訳程度の日本語ライナーノーツと、申し訳程度の歌詞の和訳の追加という豪華特典が付いておりますので、洋楽ファンも大満足。
ただ、音楽ファンの方々の間には、国内市場に対する競争相手がいなくなるので、CDの価格が高止まりしてしまうのではないかという懸念を抱く方も一部にはいらっしゃるかも知れません。また、どうしても海外盤を聴きたいという方も中にはいらっしゃると思います。そのような方々の懸念を払拭すべく、逆輸入盤の国内還流防止措置は5年間という期間をもうけます。この期間を過ぎたレコードは自由に輸入して頂いて構いません。洋楽のレンタル禁止期間は1年間でしたが、今回はアジアからの流入を防止するという観点から、ほんの少し期間を長めに設定させて頂きましたが、(業界を中心とした)皆様のご理解は十分いただけるものと考えております。
また、販売を目的としない個人輸入という形であれば、防止措置の適用外となりますので、従来通りとなります。具体例を挙げますと、

  • 現地に行ってわざわざCDショップに寄っておみやげとして数枚購入する
  • 海外の個人輸入サイトを広大なネットの海から探しだし、英語と悪戦苦闘しつつ、購入する

などがあたります。このような個人的な輸入以外は全て今回の防止措置の適用範囲内になりますのでご注意下さい。あ、そうそう忘れていました。国内のレコード会社がアジアで生産して日本に輸入するのは、対象外ですので、レコード会社の皆様、ご安心下さい。
ところで、再販制度レコード輸入権という二重の手厚い保護に守られることになった音楽業界も、自助努力は忘れていません。

レコード輸入権が導入されれば、国内CDの価格を下げるよう努力する」*2

とレコード協会の会長*3もおっしゃっています。
現在国内CDの相場は3000円ですが、今回の政府の英断により、業界としてCDの値下げに取り組もうとこれから前向きに善処していきます。ただ、大幅な値下げは中間(搾取)業者の皆様に大きな負担をかけることになりますので、値下げ幅については業界内で十分検討を重ねに重ねた後に決定いたします。実際に値下げが決定するには長い期間がかかる(かまたは決まらない)と思われますが、業界の将来に関わる重大な問題ですので、皆様のご理解をお願いいたします。
結局、レコード輸入権が導入されると、以下のような効果が得られます。本当に素晴らしいですね。

  • アジアからの逆輸入盤は入ってこなくなります。
  • そればかりか、欧米からの並行輸入盤も入ってこなくなります。
  • さらに国内市場は競争がなくなり、再販制度と相まって、CDの価格は維持。デフレに歯止めをかけます。

…とまあ、レコード輸入権が導入されると、こんなハッピーな世界が待っています。自衛隊の皆さんがイラクで頑張っているお陰で、野党も表だって批判しにくく、微妙に議論が低調になってしまっている今国会が、この著作権法改定の絶好のチャンスです。これが成立すれば、政府が文化・知的財産保護に尽力しているということを(表面上)アピールできます。
とにかく今回の「改定」で、守られるのは音楽業界であって著作権者ではないという所が最高にクールですね。本当に寒いわ。
あ、そういえば今回の「改定」では、書籍の貸与権著作権侵害の罰則強化も導入される予定です。こちらも業界保護の改定。本当もう終わってます。

*1:CCCD」・「コピーコントロールCD」とも言います

*2:なぜレコード輸入権が導入されないと国内CDの価格を下げられないのか理由がさっぱり分かりません

*3:エイベックス会長兼社長依田巽。この会社は、貸しレコード屋という人のふんどしで相撲を取る商売から始まり、いざ自前でコンテンツを持つとなったら、他の人に使われるのは嫌だとして、日本の音楽業界では他社に先駆けてコピーコントロール円盤を導入した「素晴らしい」会社です