涼宮ハルヒの消失 感想

土曜日に、笹島の109シネマズ名古屋で「涼宮ハルヒの消失」を見てきました。
初日ということで、かなり混んでいることを予想していたのですが、よく考えたら全席予約制なので、一定人数以上は来るはず無いんですよね(笑)ちなみに、入り口に告知がしてあって、「ハルヒIMAXアバターとなのはの本日分は売り切れました」とありました。IMAX上映館が中京圏では109名古屋しかないと言うのもありますが、アバターはさすがにまだまだ盛況ですね。
さて今回見た「涼宮ハルヒの消失」は、いわゆる「消失版長門有希」が登場と言うことで、以前からファンの間では一体いつやるのかという期待が高まっていました。それだけに今回の映画化は、適当に作ったら暴動が起こりかねないので、制作の京都アニメーションもかなり気合いが入っていたことと思います。

総評

原作に忠実な描写で、非常に丁寧な作りだと思いました。見ていて違和感を生じるようなところもなく、安心してみていられました。「何でもない日常」のような、細かい所の描写を得意とする、京アニの良い部分が遺憾なく発揮されていたと思います。じっくり描いているので、何回も見ても、新たな発見があるであろうと確信を持って言えます。
ですが、やはり約2時間43分(163分)という上映時間は長すぎました。原作に忠実に作ろうとするあまりに、選択された結果だと思うのですが、あの「アバター」とほぼ同じ上映時間とは。
アバター」は、ストーリーの途中で一度大きな場面転換があるので、そこで一旦リフレッシュすることができるのですが、「消失」にはそれがない。さすがに後半は少しだれました。元々感情の機微を描写することを主眼とし、盛り上がる場面が少ない原作なので、原作自体が内包する欠点と言えばそれまでなんですが、映画化に当たり、もう少し何とかならなかったのでしょうか*1。特に、映画を機にハルヒに触れようとする人には、この長さは正直きつすぎます。
涼宮ハルヒの憂鬱」を良く知る人、長門有希が好きな人(笑)は是非見に行くべき作品ですが、初心者には勧めにくい作品と言えます。

ストーリー

前述の通り、ほぼ完全に原作通りです(爆) これでは身も蓋もないのでもう少し書きます。

クリスマス直前の12月18日、主人公キョンが登校すると、何かがおかしい。いないはずの朝倉涼子がクラスに存在している。そして、キョンに告げられる驚愕の真実。「涼宮ハルヒ、そんな人はこのクラスにはいないよ」クラスの誰からもハルヒの記憶はなくなっていた。SOS団の一員であるはず朝比奈みくるとは面識がない状態であり、古泉一樹に至ってはクラスごと消えてしまっている。一縷の望みをかけて、SOS団の部室に赴いたキョンを待っていたのは…。

今回見に行くにあたって、作品自体を楽しむため、敢えて私は原作を改めて読み返すようなことはしませんでした。ですので、細かいレベルでのストーリー改変はあるでしょうが、私は気づきませんでした。どちらにせよ、ストーリー全体を揺るがすほどの大きな変更はなかったと思います。
ただ、エンディング前とエンディング後に、一部大きな(と言うほどでもないですが)シーンの追加があります。それぞれ、見る人によってある程度いろいろ解釈できるシーンだと思いますが、詳細はここでは書かないので、是非劇場で確認してください。
原作通りと言うことなので、世界設定やキャラクターを説明するような描写は一切追加されていません。従って、この作品を理解するためには、少なくとも原作またはアニメにある程度触れておく必要があります。少なくとも「涼宮ハルヒの憂鬱」と「笹の葉ラプソディ*2」は読んでから(見てから)でないと、話の意味が分からないでしょう。

描写

描写には、一切どこにも手抜きはありません。原作に忠実な表現という意味においては、これ以上ない最高の出来でしょう。
原作がキョンの一人称による物語なので、他者の言動はト書きやキョン自身のモノローグによってしか知ることができないのですが、映画化にあたり、その部分の補完がきっちりなされていました。例えば、元々普通ではなった世界が、普通の世界へと改変されることにより、逆に違和感を覚えるという流れを、キョンの狼狽ぶりに加えて、周囲の無理解ぶりできっちりと表現しています。
長門有希の描写はとにかく秀逸です。感情の起伏に乏しい「長門有希」の難しい表現に挑むということで、気合いの入り方は尋常ではありません。少々無口だが、感情を表に出すようになった消失版長門有希を、微妙な感情の動きをきちんと捉えており、彼女がとても可愛く魅力的に描かれています。これはガチで可愛いです(笑)
キョン以外のキャラクターという点では、古泉一樹の描写にも注目すべきです。改変後の世界でハルヒと同じ学校に通っていた古泉は、キョン的ポジションを獲得しているのですが、キョンが現れたことで、その地位が失われることが確定的になる。彼の終始不安げな表情は一見の価値有りです。
なお、山場の少ない作品なので、とにかく細かい描写に注目するしかないんですが、後半かなりの動きを見せた場面がありました。朝倉涼子のナイフ特攻です。SEED DESTINYミーア・キャンベルばりのクルクル回転(笑)と、空中に漂う飛び散る血しぶき。かなりの枚数を使った動画で、見応えがあります。
ちなみに、エンドレスエイトの経験も生きていたようで(笑)、起床の場面が何回もあるのですが、それぞれ微妙に異なる描写がなされていて面白かったです。

音楽

オープニングは「冒険でしょでしょ?」に新しい動画を加えたものでした。ハルヒのOPと言えばこの曲だと勝手に思っているので、良かったと思います。二期OPはガチャガチャしすぎてるし、何より平野綾が素直に歌わなくなってしまっているので、あまり好きではないので。
音楽は最高によいです。特にエリック・サティジムノペディが、消失版長門有希の心情を表す曲として効果的に使われています。穏やかだがどこか悲しげなメロディが、シーンに良くマッチしていて、私の心にぐっと来ました。サントラは2枚組で買おうかどうしようか迷っていたんですが、映画を見て、買おうと思いました。
エンディングは、長門有希役の茅原実里によるアカペラ曲。彼女は決して下手ではないんですが、さすがに歌唱力が如実に出てしまうアカペラをフルコーラスでやらせるのは、少ししんどかったように思います。

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック

劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック

*1:追記:おそらくこのまま縮めても5分〜10分が限度。それより縮めようとするとストーリーの大幅改変が必要になるでしょう。そういう意味では仕方がなかったとも言えます

*2:涼宮ハルヒの退屈」に収録