「SPACE BATTLESHIP ヤマト」ネタバレ感想

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土曜日に、有楽町マリオンのTOHOシネマズ日劇で「SPACE BATTLESHIP ヤマト」を見てきました。言わずとしれた「宇宙戦艦ヤマト」の実写化作品です。
日本アニメの古典とも言える宇宙戦艦ヤマトを実写化というのは、正直言って冒険、もしくは賭けとしか言いようがありません。その賭けにどのような勝負を挑んだのか、興味があって、見に行くことにしました。
以下、ネタバレ前提の感想です。ご注意。

総評

12/1に公開されてから、酷評をネットで目にすることが多かったのですが、私はそこまで言われるほどには悪い映画とは感じませんでした。そもそも、アニメ原作とは言え、本格的SFを邦画できちんと作り上げたこと自体が画期的だと思うので、問題外というほどではないと思います。
ファンムービーとしてみれば、原作を引用したシーンがいくつもあって、ファンならばにやりとさせること請け合い。最後のガミラス要塞最深部のシーンは、「さらば宇宙戦艦ヤマト」の名シーンを再現しており、感涙もの。同じく「さらば」を引用した、徳川機関長が死ぬシーンも目が離せません。また、ヤマトの波動砲や、戦闘シーンなど、ファンとして手を抜いて欲しくないところはきちんと力が入っており、素直に感心しました。少し原作ストーリーからの改変はありましたが、実写化における整合を取るためと考えれば、許容範囲内、私は許せました。
しかし、純粋な映画として見たとき、不可解な展開がそこここにあって、それが気になって仕方がありませんでした。最も問題だと感じたのは、第三艦橋切り離し後に、古代と雪が突然キスをするシーン。雪が戦闘班のエースだった古代に憧れて入隊したという話が前段で語られているのですが、それにしても恋愛にまで発展する要素がなさすぎる。あまりにも唐突すぎて、白けてしまうほどでした。台無しとまでは行きませんが、この重要なポイントをしくじったために、後の展開の説得力が失われてしまったのが非常に残念でした。
ファンムービーとしては上出来、邦画のSFとしても合格点、しかし映画全体としての出来は詰めが甘い、という感じでしょうか。当初の期待度の低さを大幅に上回ってくれただけに、何とも惜しい映画です。

キャスト

キャストで最も注目すべきはやはり主演の木村拓哉でしょう。ヤマトという作品においても、彼は「キムタク」以外の何者でもありませんでした。キムタクの演技は、はまれば強いんですが、原作がしっかりした作品ではあまり向かない傾向にあります。そして、残念ながら今回は、比較的悪い方に働いてしまったように思います。古代はもう少し堅物であるべきところ、キムタクに合わせるために、やや軽薄に変更されていました。監督か脚本かが主演に気を使ったのかもしれませんが、もうすこしどうにかならなかったのでしょうか。
しかし主演を脇に置けば、配役についてはほぼ満点と言えるのではないでしょうか。原作のイメージを壊さないように、注意深くキャストが選ばれているのがよく分かります。
特に真田を演じた柳葉敏郎は、青野武をイメージした重厚な演技で、見張るものがありました。森雪の黒木メイサも、ツンデレキャラになった森雪の雰囲気にあっていて、格好良くて可愛い。西田敏行の徳川機関長もイメージ通り。しかし、女性化した佐渡先生は…ちょっとキレイすぎですね。高島礼子が胡座組んで日本酒飲んでも、違和感しかないよ(笑)
声優陣もしっかり登場しています。ナレーションのささきいさお、アナライザーの緒方賢一と、実写キャストに負けない存在感を放っていました。あと、形を変えていたとは言え、伊武雅刀デスラーがきちんと出ていたのは良かったですね。

VFX

ヤマトのVFXですが、ハリウッド映画と比べれば、まだちょっとこなれていないのは否定できません。しかし邦画にしてはものすごく頑張っており、ようやくハリウッドと戦えるレベルになったな、と実感させられました。見応えのあるVFXを見せてくれたのは、嬉しいです。
特に、「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌アレンジに乗せて、冒頭の地面を割って飛び立つヤマトのシーンは、ファンならずとも興奮することでしょう。
戦闘シーンは、宇宙での艦隊戦や空戦シーンが多く、比較的日本の特撮・CG技術では得意分野と言える所です。こういう所できっちり見せ場を作っていたのは正解でした。
アナライザーはびっくりでした。まさかあのような高機動性を誇るロボットに変形するとは。当初は出す予定がなかったとのことですが、私は登場させて正解だったと思います。
あとVFXとは違いますが、艦橋や艦長室、談話室など、セットが微妙にちゃちかったりするのは、原作のイメージを残したと肯定的に受け止めておきましょう(笑)