東京国立博物館 国宝 土偶展 感想

上野の東京国立博物館で、特別展「国宝 土偶展」と、平常展を見に行ってきました。土偶展は開催期間がほぼ終了で、日程的にはギリギリでした。このタイミングで東京出張があったことは非常に幸運でした。
ちなみに、11時頃に入場したのですが、最終日1日前ということで、20分ほどの行列ができていました。阿修羅展とかと比べれば、まあ序の口ですね。内部も結構混雑していました。皆さん土偶が好きですね(笑)

国宝 土偶展 概要

http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=6908
国宝 土偶展は、大英博物館で行われた特別展「the Power of DOGU」を日本用に再構成した特別展です。国宝3点・重要文化財23点・重要美術品2点を含む67点が出品されており、イギリスで行われたのと出品物に変更はありません。土偶というと結構地味ではありますが、日本で国宝指定されている土偶3点が一堂に会するのは本展が初めてで、出品物のレベルもまさに「国宝 土偶展」と言うにふさわしい作品が揃っていたと思います。

レイアウト・構成

展示場所は本館の特別5室。本館に入ってすぐ、1階の奥にあります。モナリザツタンカーメンなども展示された伝統の特別展示室です。レイアウトは、法隆寺宝物館を思わせるような黒い背景に、ガラスケースが点在していて浮かび上がるような配置。おそらく「裏側からも見て欲しい」という意図なのでしょう。土偶はそれほど大きくないので、ガラスケースも大きなものを用意する必要がなく、このようなレイアウトにしてもあまり無理はありません。
壁には、土偶にまつわるエピソードを書いた展示パネルが貼ってあり、土偶が成立した背景や、注目して欲しいポイントなどが解説されています。こういうのは親切だと感じました。土偶と言っても歴史の授業でちょっと出てくるくらいで、結構忘れているんですよね。実際に、会社の同僚に土偶展に行くことを言ったところ、「土偶って古墳に入ってるやつでしょ?」とか言われたので、埴輪と結構ごっちゃになってる人もいるみたいですし。

作品


さて、各作品ですが、やはり国宝土偶3点のコラボレーションは圧巻です。北海道唯一の国宝「中空土偶」(写真左)、女性の姿を丁寧に造形した「縄文のビーナス」(写真中央)、手を合わせて体育座りをする姿が印象的な「合掌土偶」(写真右)。どれも縄文時代の造形センス・レベルの高さを表す傑作だと思いました。
中空土偶は、高さ40cmにもなる、土偶としては大型の作品です。なんと言っても注目すべきは、あごあたりとへそのあたりに描かれた小さな円形の模様。おそらくヒゲか何かを表しているのでしょうが、直径1mmくらいの円が丁寧かつ緻密に表現されているのは凄いと言わざるを得ません。
縄文のビーナスは、丁寧に形作られた曲線美もさることながら、平べったい頭部に描かれた渦巻き模様が印象的でした。何かをかぶった女性を表しているのか、このような髪型を表現したのかは分かりませんが、現代の我々から見ても、斬新かつ洗練されたデザインだと思います。
合掌土偶は、土偶にしては珍しい写実的な作品です。体育座りをして、顔の前で手を合わせており、何か祈っているようにも見えます。解説によると、天然アスファルトで補修された形跡があるとのことで、大切に扱われていたことが分かります。特徴的な造形に加えて、縄文人の土偶への接し方をもかいま見れると言うことで、国宝にふさわしい作品と言えましょう。

国宝以外でも面白い作品がいろいろありました。特に私が注目したのは「立像土偶」(重文)。顔がなく立った姿の土偶です。ぱっと見、ラーゼフォンのドーレムや、蒼穹のファフナーに出てくるフェストゥム、はたまた亡念のザムドを想像してしまいました(どれも似てるわけではないんですが、雰囲気と言うことで)。最近のアニメに出てくるような造形が、縄文時代に既に考えられていたことにびっくりしました。


特別5室のみということで、結構こじんまりした本展でしたが、縄文時代の文化の粋が結集した、中身の濃い特別展だったと思います。