DS版 ドラゴンクエストVI 感想

ドラゴンクエストVI 幻の大地

ドラゴンクエストVI 幻の大地

発売日に買って、土曜日にやっとこさクリアしました。珍しく1ヶ月もかかってしまったという感じですが、実は直近2週間ほどは放置状態でした(爆)

総評

ドラクエ連番作品でも、これまでリメイクはされておらず、DS版が初のリメイクということで、世間の期待は高かったものと思います。私も、SFC版をリアルタイムでプレイした古参のドラクエファン(笑)として、かなり期待していました。
結論から言うと、正直言ってかなり期待はずれでした。初めてプレイする人ならば、もう少し違う感想もあると思いますが、追加要素がほとんどないほぼベタ移植。クロノトリガーのように、元が文句なしの作品であれば、ベタ移植も評価されるのですが、VIの場合、元のゲームバランスがあまり良いとは言えず、またシナリオの点でも唐突な部分や説明不足で分かりにくい所があるので、(一部小幅なゲームバランス変更はありますが)そういった部分も含めて移植してしまったのは問題でしょう。
もちろん移植レベルの平均点は超えていると思います。数々のリメイク作品で良いものを出してきたドラクエだから、今回の出来を批判してしまうのかも知れません。しかしドラクエだからこそ、もっと高みを目指して欲しかった。そういった意味で残念な作品でした。

オリジナル(SFC版)からの変更点

オリジナルからの主な変更点は以下の通り。

以下、各項についてそれぞれ述べることにします。

ゲームバランス

今回のDS版では、戦闘システムにおいては大きな変更はなく、全体的に小幅な調整が加えられていました。基本的に、SFC版より易しくなるように調整されています。SFC版はかなり厳しいバランスできつかったので、易しくしたのは時代の流れからいって自然だと思います。
例えば、全ての雑魚モンスターのHPが減少し、獲得経験値・ゴールドが増加していました。SFC版はかなり厳しかった印象があるのですが、この影響で、レベル上げをするという必要があまりなく、サクサク進めることができました。
ただ基本的には易しくなったものの、ボスモンスターの強さは変更されておらず、そういう意味では、昔の雰囲気を残していたと思います。真ムドーの強さは相変わらずで、その理不尽な攻撃に身悶えしながらも、懐かしさに感動していました。モンスターを個別に調整しなかったのは、こういったオリジナル版の良い部分を残すためだったと思うので、この判断はありでしょう。
ただ、変更がほとんど無いと言うことは、特技・呪文のアンバランスさも温存されていることを意味します。特技偏重・呪文軽視のバランスは変わっておらず、最後にはどの敵でも正拳突き連発+ハッスルダンスというような戦法になってしまうのはどうかと思いました。開発会社が違うとは言うものの、IXではこの辺がだいぶ修正されていたのですが…。
SFC版で不遇であったテリーは、初期レベルが底上げされ、新たに武闘家の熟練度マスターに変更されており、若干の強化が図られていました。しかし、スライム系以外のモンスターが仲間にならなくなった影響もあって、ドランゴの地位が大幅向上。さらに、ドランゴ自身の属性耐性も全体的に向上しているようで、結果「ドランゴ引換券」という蔑称は維持されてしまう皮肉な結果に。スライム系以外削除の、バランスへの影響は思ったより少なかったのですが、一部甚大な被害を受けてしまったようです(笑)

「はなす」システム

DS版の特徴として、VIIで導入された「はなす」システムが毎回採用されています。IVやVにおいては、各キャラクターのつながりが結構深いこともあって、キャラクターの掘り下げてくれる効果がありました。
今回も「はなす」システムは採用されていたのですが、私はVIへそのまま従来のシステムを流用してしまったのは間違いだったのではないかと思います。


まず、IVやVに比べてキャラクター同士のつながりが薄いことが挙げられます。IVでは、各章で仲間たちの旅をまず描き、それから5章で初めて合流するという形をとっており、プレイヤーが感情移入しやすい形になっていました。Vでは、父の死や結婚など、イベントに重厚なものが多く、友情や血縁で結ばれたキャラクターの心境を描くために、「はなす」は実に効果的に作用していたように思います。
翻って、VIはどうでしょう。どの仲間も、夢の世界で「たまたま」会った人ばかり。出会いに必然性があまりない。現実世界では深い縁があるのかと思いきや、ストーリーを進めても、結局たまたま会っただけと言うオチ。それぞれのキャラクターにエピソードはあるものの、仲間同士のつながりという点では、IVやVに比べて薄すぎます。そんな中で「はなす」システムを採用した結果、会話に対して、各仲間がただコメントするだけという状態になってしまいました。これでは会話が面白くなるわけはありません。加えてキャラクター同士の絡みもないので、あえてBボタンを押して会話を聞く価値が薄れてしまいました。


二つ目に、IVやVに比べてストーリーが長く、分かりにくいという点です。ストーリーが長編になることにより、プレイ時間も長くなっています。そうなれば、単にBボタンを押すという動作も、だるくなってきます。「はなす」システムでは、仲間と話すには仲間1人につきBボタンを1回押下する必要がありますから、街の人が20人いたら、それだけで20人×3=60回余計にボタンを押さないといけません。最初は面白いが、これがボディーブローのように効いてきて、辛くなってきます。前述の会話のつまらなさも相まって、いよいよ苦痛に感じてしまいました。


これら二つの問題点は、VIという作品がもともと内包していたものなので、「はなす」システムを採用すればこうなることは事前に分かりそうなものですが、なぜそのまま使ってしまったのでしょうか。シナリオが長いので、作る会話の量も格段に多かったろうに、かなり疑問です。
もう一度リメイクすることがあるのであれば、FF13のような自動会話システムにするか(DSではスペック的に無理でしょうが)、メインのストーリーをもっと掘り下げて、キャラ同士のつながりをプレイヤーが感じられるようにしてほしいです。さもなくば、せめて会話の後にボタンを押さなくてすむようにするべきでしょう。

イベント描写

イベント描写ですが、2画面と言うことを利用した、効果的な描写がいくつもありました。ライフコッドの祭りにおけるルビス降臨に始まり、レイドックにおける兵士長との会話、ペスカニのかくれんぼ、ヘルクラウド城、そしてエンディングなどなど、秀逸な表現がたくさんありました。もう2画面という環境を完全に使いこなしているなあという印象でした。
また、これはDS版リメイク共通ですが、街や一部のダンジョンが回転できるのは良かったと思います。IXが微妙に回転できてなかったので、レイドック城、魔術師の塔がグルグルできるのは地味に嬉しかったです。

仲間モンスターシステムの変更

SFC版での仲間モンスターは、Vと同様、戦闘後に起き上がるという形で仲間にすることができました。しかしDS版では、起き上がりは廃止され、VIIIと似たような話しかけて仲間にする「スカウトシステム」に変更されました。さらに、仲間になるのはスライム系のみになりました。
当初発表されたときには、オリジナル版を知る古参のファンからかなり批判の声が上がったようです。しかし、私は、敢えてこの変更を支持したいです。
SFC版での仲間モンスターシステムは、人気があったVを引きずったという印象が強く、全部のモンスターを仲間にできないなど、今ひとつ洗練されていなかったように思います。
せっかくスライム格闘場があるのに、仲間にできるのはスライム系じゃないのもいて、一貫していませんでした。ストーリー的にも、モンスターを倒して起き上がることに、必然性は全くありません。今回、バッサリリストラされたおかげで、VIとしての仲間モンスターの方向性が明確になったのではないでしょうか。
しかしこの変更はほんの少し悪影響もあって、唯一スライム系以外の仲間モンスターとなったドランゴの地位が、さらに高まってしまいました。相変わらず「サブキャラクターがメインの仲間より断然強くて、スタメン確定」というのは物語的にどうか、とは思いました。

スライムカーリング

これはただのオマケですね。こういうミニゲームを足すのはいいんですが、なぜ賞品が何もないんでしょうか。モチベーションという点で微妙です。