根津美術館 名物刀剣展 感想

表参道にある根津美術館で、「名物刀剣展」を見てきました。行くかどうか若干迷ったのですが、今日が最終日ということもあったので、重い腰を上げて行ってきました。
日本刀には「名物」と呼ばれる、別名・異名を付けられた名刀があります。本展では源平の時代から徳川時代の「享保名物帳」に至るまで、諸将に愛されてきた名物刀剣の数々を概観する展覧会です。

感想

このような刀だけを集めた展覧会に行くのは初めてだったのですが、来て良かったと心から思いました。それぞれに由来や伝説のある名物が展示され、歴代の武将が魅了された美しい刀の数々が、私を虜にしてくれました。三日月宗近、獅子王、包丁正宗、石田正宗、義元左文字などなど…まさに名物だらけ。
また、刃文が見やすいような若干明るめの照明になっていて、刀工による作風の違いも感じることができました。正宗、貞宗、吉光、来国光など、見比べることができたのは貴重な体験でした。白熱電球や蛍光灯だとこういう展示は難しいので、LEDさまさまですね。

注目作品

三日月宗近は、確か大学時代に東京国立博物館で見た以来なので、少なくとも5年ぶりくらいのはずです。能「小鍛冶」にも登場した平安時代の名工三条宗近の作で、刀身に三日月状の打ち除け*1がある、天下五剣の一つに数えられる名刀です。久しぶりに出会った宗近は、三日月がやはり神秘的で、とても優美な姿をしていました。
義元左文字は織田信長伝来の刀で、今川義元から信長が奪ったのち、豊臣秀頼から徳川家康に送られた品。しかし江戸大火で損傷してしまったため、再刃(焼き直し)が行われたものです。数奇な運命をたどった
大兼光は三島の佐野美術館所蔵の大太刀。ゆるやかな波のようなカーブを描く「のたれ」の刃文が、大太刀にふさわしくのびやかな様子をたたえています。

雑感

今回のように、ひとつの作品ジャンルに絞った展覧会というのは、見る方にも予備知識が求められる、若干敷居の高い展覧会だとは思いました。しかし、見るべきポイントをいくつか抑えておけば、すごく楽しめます。日本刀なら、刀自体の大きさ、刃の形状や、刃文などでしょうか。刃文や光の反射などは、図録では再現できない部分でもあるので、是非実物を見てもらいたいですね。