アニメソングにおけるタイアップ曲

現代のアニメソングを考える上で、タイアップ曲の存在は避けて通ることはできない。ここでは、アニメソングにおけるタイアップ曲について概観する。

タイアップ曲の定義

アニメソングにおける「タイアップ曲」とは、互いの販売促進・話題性向上という関係で結ばれた、アニメ作品とは関係の薄い一般アーティストが歌っている曲のことを言う。
現在では、ある一つのアニメ作品のために作られたものではない曲が多く、またアニメ作品の主題を考慮するということはあまり行わない。
従って、あるアニメ作品のために作られたものではない曲は、基本的に全てタイアップ曲であるという捉え方もできる。
ただし、「新世紀エヴァンゲリオン」のED「Fly Me To The Moon」のように、既存の一般曲であっても、販売促進・話題性向上の目的が薄く、その曲を用いることで作品の主題などを表そうとしている場合については、タイアップ曲とは言わない。アニメ作品のイメージソングなどに、しばしばこの場合にあてはまるものがある。

タイアップ曲の分類

現在行われているタイアップには、大きく「歌手・楽曲販促型タイアップ」と「作品販促型タイアップ」に分けることができる。多くは作品や歌手・楽曲の知名度によって分類されると思われるが、作品や歌手の知名度は個人の主観に左右されるため、その境界を明確に定めることは難しい。多くのタイアップは多かれ少なかれ両者の性質を兼ね備えている。
なお、各タイアップの名称は分類のために便宜上名付けたもので、一般的名称ではない。

「歌手・楽曲販促型」タイアップ

アーティストや、そのアーティストの楽曲を売り出すために、アニメを結びつけるタイアップ。
典型的なものでは、原作付きアニメ(原作が存在しているため、オリジナルアニメ作品と比較して番組開始時の知名度が高い)の主題歌に、あまり有名でないアーティスト(例えば新人アーティスト)の曲を採用する場合がこれにあたる。
現在行われているタイアップの多くがこのパターンである。

「作品販促型」タイアップ

アニメ作品の話題作り・人気取りのために、アーティストや楽曲を結びつけるタイアップ。主として、アニメに「箔をつける」ために、有名アーティストの曲をあてることがこのタイプと言える。(例:「快感フレーズ」OP1「サバイバル/GLAY」)
ドラマでは多く見られる手法ではあるが、アニメでは、「歌手・楽曲販促型」タイアップに比べると、数は多くない。

「複合型」タイアップ

有名な(または放送前の知名度・期待度が高い)アニメに、有名なアーティストの曲をあてるというパターン。歌手・楽曲販促型、作品販促型の両者の性質を兼ね備えているものを言う。両者が既に有名であるため、非常に効果的なタイアップ効果を見込める。最近では、TBS・MBS系列のいわゆる「土6」作品が、この型に当てはまるものが多いと言えよう。
土6作品では、「鋼の錬金術師」が良い例である。月刊少年ガンガンの看板漫画をアニメ化するとともに、SMEに所属する有名アーティストの楽曲を多数起用し、互いの相乗効果を狙った。その試みは成功し、「鋼の錬金術師」のベストアルバムは、見事音楽史上4作目のアニメアルバム初動売上1位を記録した。
他には「SLAM DUNK」がこのタイプにあたる。


また、現在ではあまり行われなくなったが、過去には以下のようなタイアップも数多く行われていた。

主題歌重視型タイアップ

一般アーティストが、あるアニメ作品のために作られた曲を歌うタイアップ。アニメのタイアップが始められた当初は、ほとんどがこのタイプのタイアップであった。
曲自体が作品の主題・イメージを表しているため、一般アーティストが歌うことは話題性向上のためと言える。例としては沢田研二「ヤマトより愛をこめて」、ゴダイゴ銀河鉄道999」、西城秀樹「ターンAターン」などが挙げられる。
また、アニメの原作者自身の指名により、有名アーティストの曲が主題歌となる場合も、このタイプに該当するといえる。この場合もアニメの話題作りという側面が大きい。(例:とっても!ラッキーマンOP「ラッキーマンの歌/八代亜紀」)
ほとんどの場合、曲名もしくは歌詞にアニメの内容を暗示する語句が用いられている。

アイドル型タイアップ

新人アイドルを売り出すためにアニメを利用するタイアップ。
主題歌だけでなく、ヒロイン役の声優をアイドルが担当したりするのが特徴。80年代のアイドルブームの時に良く行われた。例としては「魔法の天使クリィミーマミ」「超時空要塞マクロス」などが挙げられる。
また、80年代半ばのフジテレビ系列のアニメ作品においては、おにゃん子クラブ所属のアイドルを売り出すための手法として、アニメのタイアップが非常によく用いられた。ただこちらに関しては主題歌だけの担当であった。例としては「ハイスクール!奇面組」や世界名作劇場シリーズなどが挙げられる。