実写版「マリア様がみてる」感想

http://www.mariasama-movie.jp/index.html
池袋テアトルダイヤで、実写版「マリア様がみてる」を鑑賞してきました。
今野緒雪作の同名小説第1作を、実写で映画化した作品。私立リリアン女学園の1年生福沢祐巳が、2年生で紅薔薇のつぼみである小笠原祥子と出会い、文化祭での交流を通して、スールの契りを交わすまでを描いています。

作品感想

一言で言えば「ほぼ原作通り再現」です。原作のイメージや世界観を壊さぬように、細心の注意を払いながら実写化した印象を受けます。キャストやロケ地、演出も、一つ一つ丹念に組み立てられており、原作への敬意が随所に感じられます。細かい所で原作との違いはありますが、再現度の高さは間違いなく第一級。ファン向けの実写化作品としては、ほぼ満点と言っていいでしょう。
印象に残った場面は、いろいろありますが、連弾のシーンと、二人でダンス練習をするシーンを挙げたいです。祐巳と祥子の二人が息の合った演技で、見ているこちらがドキドキしてしまいました。ダンスは細かく見るとどうしてもアラが見えてくるので、引きでのシーンとなっていますが、けっこう練習したのでしょうなあ。
原作の内容を全部入れるのは尺の長さから考えても困難なので、ストーリーは一部簡略化されています。しかし主要な要素は維持されているので、それほど違和感はありません。ちなみに、最も割を食ったのは柏木さんで、「ギンナン王子」の二つ名も与えられず、完全な端役になってしまいました。


なお、リリアン女学園のしきたりや風習*1はいろいろ複雑ですが、この作品のターゲットは言うまでもなく原作読者なので、特に細かい説明は行われません。また、人物の紹介も台詞の中でしか行われません。従って、最低でも原作1巻は読んでから見ることが必須です。予備知識なしに見ても、全く面白さが分からないことと思います。

キャスト

キャストは柏木さん以外すべて女性。とにかく可愛くて美人な女の子だけを揃えてきました。しかも、登場人物に合わせた配役がなされており、申し分がありません。原作を読んだ人なら、誰がどの役なのか、見ただけで分かるでしょう。

紅薔薇のつぼみ小笠原祥子:波瑠
完璧なまでに美しく、そして負けず嫌い、しかし弱い一面もある孤高の紅薔薇のつぼみを、しっかりと演じています。名家の出であるため、上品さを前面に押し出した演技をするのは難しかったことでしょう。最初は三白眼気味に見つめていて少し感じが悪いのですが、後半は祐巳をまっすぐに見るようになって、心境の変化を感じ取ることができます。
福沢祐巳未来穂香
明るくて純朴さを残しており、コミカルな一面そして芯の強さを持つ祐巳のイメージにぴったり。少し演技に拙さが残りますが、祐巳役だからこそ許されるという感じがします。むしろその辺を狙っての配役かもしれません。ちなみに、モノローグも担当していますが、滑舌に難があるので、ちょっと聞きづらいかも。まあ本編を見たら許容範囲だと思えますが。実は仮面ライダーオーズでメズール(人間体)を演じているのですが、見てる間には気づきませんでした。
紅薔薇水野蓉子平田薫
高校生というには少し年が行っているようにも感じますが、大人びた紅薔薇さまとしてなら問題はありません。祥子を温かく見守る役を、余裕たっぷりに演じています。
白薔薇佐藤聖滝沢カレン
唯一の茶髪キャラで、見た目が若干チャラいため、ともすれば今どきの高校生になりがちなのですが、セクハラオヤジ的なところも含めて、なかなかうまく演じています。
白薔薇のつぼみ藤堂志摩子高田里穂
仮面ライダーオーズのヒロイン泉比奈も演じていて、演技力は全く問題ないのですが、志摩子を演じるには少し身体の線がしっかりし過ぎてる感じ。彼女が悪いわけではないので、これは仕方がない所でしょう。
黄薔薇鳥居江利子秋山奈々
仮面ライダー響鬼で、あきらを演じた少女が立派に成長しました。台詞は少ないですが存在感はたっぷり。部屋のすみの方で腕を組んで、祥子さまと祐巳のやりとりをニヤニヤしながら見ている感じがとても黄薔薇さまっぽいです(笑)
その他のキャスト
ちょい役的扱いになってしまった支倉令島津由乃の両名も、雰囲気はぴったりです。由乃は着ぐるみ着てネズミ役をやってるのが見所でもあります。柏木さんは…まあいいやw

舞台・ロケ地

舞台やロケ地の選択は、マリみての世界観を実写に再現する上で最も重要と言える要素です。旧制松本高校が主要な舞台のようですが、よくこんなぴったりな場所見つけてきたな、という感じです。さすがに少し廊下が狭かったりしていますが、原作のイメージはしっかりと保っています。
特に、薔薇の館の由緒あるたたずまいは原作の雰囲気そのままと言っていいほど。階段がギシギシ言う所も、ビスケット色の扉も期せずして再現されていましたね。
マリア像については最も懸念される所だったのですが、小ぶりな彫像を比較的こじんまりとした中庭に設置。遠景で撮った時に、建物を通してマリア像が見えるような配置になっており、なかなか良かったです。

マリア様のたしなみ

上映前に、本編前に上映される鑑賞上の諸注意を、「マリア様のたしなみ」というミニアニメで流してくれました。祐巳と祥子はアニメ版と同じ、植田佳奈伊藤美紀。二人の掛け合いはもう手慣れたものです。話によると3バージョンあるらしいんですが、私は4つの校則(注意事項)を祥子が紹介して、ルール違反する山百合会の連中(笑)を次々と注意していくいうストーリーでした。

ツッコミ

これらは本筋に影響ないので、単なるツッコミです。
案外気になったのは食事でしょうか。志摩子さんは塗りの弁当箱で里芋の煮っ転がしを食べているのではなくて、プラスチックの弁当箱でサンドイッチを食べています。また、文化祭の打ち上げでは、みんな手づかみでバクバク食べてるんですが、祥子さまはハンバーガーも食べたことないはずなのに手づかみで食べてますよ! 実は、祐巳のお箸の持ち方が一番気になったんですが、あえて直さなかったのでしょうかね。
あとは、ラストも突っ込みがいがあります。「月とマリア様と蔦子だけが二人を見ていた」になっていてオイオイ!と思わず心の中で突っ込みました。しかも夜なのにやたらときれいに撮れてます。

おまけ

テアトルダイヤで撮ってきた写真です。作中で使用された衣装を展示していました。原作とは違って、セーラーカラーがアイボリーから白に変更されています。カメラ映えを考えての変更なのでしょうか。

*1:山百合会のしくみ、スール制度など